確かな技術で、インフラの長寿命化を支える。
日本の橋梁やトンネル等のインフラ施設は、高度経済成長期に整備されたものが多く、今後急速な老朽化による事故が懸念されています。
老朽化の原因は、構造形式・周辺環境などさまざまですが、人間の健康管理と同様に、日々のメンテナンスと定期的な点検が必要不可欠です。インフラ長寿命化社会を維持し、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害防止を図るために、弊社では土木設計技術を応用して点検・設計・長寿命化計画を行っています。
また国土交通省が推進するICT技術の活用が増えています。
弊社においても、ドローン(UAV)などを使用した点検にも注力し、新技術を用いた点検方法に積極的に取り組んでおります。
橋梁点検
橋梁の長寿命化修繕計画において、基礎情報を得るために橋梁の点検を行いました。点検対象となる橋梁はトラス構造で鋼材間隔が狭く、4車線道路で桁幅も広かったため、橋梁点検車から吊り足場を設置しての近接目視による点検方法を提案し点検を行いました。
また、UAVとAIを組み合わせた点検方法も行っています。
橋梁点検の作業補助として、UAVで取得した画像と橋梁点検車から撮影した近接写真との比較を行い、また、AIによる画像解析と通常の点検方法により抽出された損傷を比較し、これらの比較検証結果と合わせて調査結果を報告書に取りまとめました。
弊社では、UAV、橋梁点検車、はしご、吊り足場、調査船、ロープアクセスなど点検箇所に合わせた作業方法で効率的かつ安全に行うことができるよう点検方法をご提案します。
橋梁補修設計
全国の橋梁の数は約70万、このうち、建設後50年を超えた2m以上の橋梁の割合は2023年に約43%、2033年に約67%にのぼります。昨今では老朽化による事故が不安視されており、早急に対応する必要があります。
弊社には技術士([建設部門]鋼構造及びコンクリート)、道路橋点検士、コンクリート診断士が多数在籍しており、橋梁修繕計画の策定・橋梁補修設計の最適なご提案をいたします。
例えば、昭和6年に架けられた全長約35mの橋梁の補修においては、まず橋梁全体について鉄筋およびコンクリート、鋼材、伸縮装置、舗装等の調査・測定を行い、劣化の原因や健全度について評価しました。
その後、それに基づき、補修・補強の要否の判定及び対策等を立案し、対策工事に必要な詳細設計を行うとともに、概算工事費を算出しました。
施工後80年以上が経過し、設計図が無いため、床版の配筋位置を探査して、鉄筋を切らないようにコアを採取しました。
支承部は特に損傷(腐食)が激しかったため、ベント支保工により上部工を固定した状態で支承の取替え工を採用しました。
トンネル点検
トンネルは、近接目視とハンマーによる打音検査で点検を行います。目視点検では、ひび割れや変色、漏水の確認を、打音点検では、コンクリートの浮きや空洞が無いかを確認します。損傷を確認した箇所には、チョークで印を付け、図面に位置と損傷の状態を記入していきます。
なお、写真のトンネルは、完成したばかりで日が浅く、一般車はまだ通行できない状態のもの。橋梁やトンネルの点検作業は、古くなった構造物だけでなく、出来たばかりのものも対象になります。初期状態がどのような状態だったかを記録しておくのは、アセットマネジメントを行う上で大切なことです。
標識・照明灯等の点検
道路標識、道路照明施設の点検は、突然の落下や倒壊等の事故を防止するため、変状を早期に発見することを目的として行われるものです。
ある業務では、道路案内標識152箇所について健全性の点検を行いました。点検は近接目視を基本としますが、路面境界部がアスファルト・土砂等で覆われていたため、路面をはつり、腐食が生じていないか調査しました。また、ナットのゆるみ等の異常を把握した場合には、締め直し等の応急措置を行いました。
写真の照明灯点検では、点検に先立ち市道の現地調査を実施しました。その結果、交通量の多い路線を優先し、点検を行う照明灯205基を決定しました。標識点検と同じく、近接目視により亀裂・腐食・塗料の浮きなどを調査します。
現地での点検後は、損傷の有無等により判定を行い、点検記録票を作成します。
点検記録票に合わせて施設台帳を作成する際は、地図情報システムで表示・検索が可能なデータ形式にすることにより、今後の管理に活用して頂くことができます。弊社では、安全な道路交通を確保し、効率的な道路管理に役立てて頂けるよう、変状の確実な発見と汎用性の高いデータ作成に取り組んでいます。
河川管理施設点検
河川管理施設の点検は、河川管理施設である護岸堤防等を適切に維持管理するため、堤防等の状態を点検・把握するとともに、その結果を今後の河川管理施設の維持管理に活用していくことを目的に行われるものです。治水・利水・環境保全に係わる機能に影響を及ぼす堤防等の河川管理施設の変状は、様々な要因により生じ、時期的、場所的な現れ方も多様です。そのため定期的に、あるいは出水や地震等の大きな外力の作用後に点検し、機能状態を評価して必要な対策を実施する必要があります。
ある業務では、堤防・護岸等計18河川(約32.0km)、樋門・水門等計5施設について点検を行いました。点検計画書を作成したうえで、徒歩による目視点検により、変状・変化の発見・観察を行い、詳細点検あるいは補修等の適切な対策の判断の前提となる点検結果の評価を作成し、報告書に取りまとめました。また、変状・変化が著しく、補修等が必要であると評価された箇所については、概算工事費を算出して、今後の維持管理に活用できるように対応させていただきました。
長寿命化計画
国・地方公共団体等がインフラの長寿命化に取り組む中、平成25年に「インフラ長寿命化基本計画(国土交通省)」が制定されました。それに伴い、地方公共団体等のインフラ管理者に対して、公共施設等総合管理計画及び個別施設毎の長寿命化計画を策定することを要請しています。
弊社では、インフラの長寿命化に取り組んでいますが、なかでも注力している学校施設の長寿命化計画の策定の流れをご紹介します。
学校施設長寿命化計画策定の流れ
1)現況の調査
- 基本情報(構造、建築年度 等)
- 人口推移、配置状況、関連経費の把握
- 老朽化状況の把握
- 今後の維持・更新コストの把握
2)長寿命化計画策定
- 目指すべき姿や実態の整理
- 施設整備の基本的な方針の検討
(目標使用年数、規模・配置の方針) - 整備水準の設定
- 優先順位の決定、直近10年の整備計画の策定
- 長寿命化実施計画、運用方針の検討
ある市では、築30年以上の建物が過半数を占めており、大規模改修に多額の費用がかかることが予想されています。そこで、整備・維持管理コストの縮減・平準化を図るため、中長期的な視点から学校施設の整備の方針を示すことを目的として、小・中学校などの計16施設についての計画策定を行いました。
子供たちが一日の大半を過ごす学校ですが、教育の場としての機能だけでなく、地域の交流や災害時の避難場所としての機能を持っています。本業務では、安全性だけでなく、快適性・学習環境向上・地域のコミュニティ拠点などの観点から、整備の方針・計画を検討しました。
また、優先順位が高い施設をモデル校舎とし、ドローン撮影画像をベースとしたパースを作成しました。ドローン撮影画像やパースは、カルテ等の記録や住民説明用資料としてお使いいただけます。
学校施設は、第2次ベビーブームに合わせて建築されたものが多く、建築後25年以上経過した建物の床面積が全体の延床面積の約7割を占めるなど、校舎等の老朽化が大きな課題となっています。建物部材の経年劣化は、安全面での不具合や機能面での不具合を引き起こします。子どもたちの安全確保はもちろんのこと、公立小中学校の約9割が地域の避難所となっており、地域の防災機能強化の観点からも、早急に学校施設の老朽化対策に取り組む必要があります。弊社では、学校施設を含んだ公共施設等の健全度について構造体の調査・点検を実施し、総合計画および長寿命化計画をご提案しておりますので、ぜひご相談ください。
路面性状調査
路面性状調査とは、道路の舗装の現況を把握することで、第三者被害の恐れのある事故を防止し、安全かつ円滑な道路交通の確保を図るための調査です。弊社では、継続的な道路の維持管理を行うため、調査結果を基に補修優先度の評価を行い、補修計画の策定も行います。
路面性状測定は、路面性状測定車により実施します。路面のひび割れ評価、わだち掘れ評価、縦断凹凸評価、パッチング数評価等を行い、帳票作成・路面性状評価マップの作成をし、測定、解析・評価した手法及び結果について、報告書に取りまとめます。
なお、ある県での路面性状調査では、私たちはまず先に現地踏査を行い、あらかじめ目視により変状箇所が見える箇所を抽出し、変状が見える箇所から取得したデータの解析業務等を行いました。計測調査前に中間報告することにより、より早くお客様に危険個所の認識と後続作業が必要な箇所をお伝えし、予算の関係もあることから緊急に修繕が必要な道路、また緊急性はないが修繕が必要な道路等の対策をいち早く進めて頂けるように対応させて頂きました。